Sun, Jan 08
- 01:52 児童文学作家の芝田勝茂さんと読む『古事記』の読書会。今日で三回目だけれども、本当に面白い。成立してから今年で丁度1300年になるというけど、どきりとするほど生々しく視覚的な描写が随所にあって、そうした時間的隔たりを感じさせない(むしろ『源氏物語』よりも親しみやすいかも知れない)
- 02:11 これまで内容的・政治的に敷居の高い印象だったこの古典から、古代人の想像力の源にじかに触れるような風通しの良い感覚を受け取ることが出来たのは、もちろん芝田さんの力によるところが大きい。まず、朗読を担当される方が毎回いらして、黙読ではなく「音」で文章に触れること。
- 02:26 もとは文字を持たない時代から受け継がれてきた伝承であり、暗唱(あるいは朗読)を書き取ったもの。確かに耳で聞いて初めて「こおろこおろ」「ほらほらすぶすぶ」といった独特の擬音や、畳み掛けるような文章のリズムが実体として立ち上がる。視覚では読み取れない付加情報が「解凍」される感じだ。
- 02:42 そしてファンタジーの書き手としての芝田さんが、これまでの学問的解釈の蓄積ではなく、大元の言葉に託された想像力の深さの方に寄り添い、古事記の風景を生き生きと描き出してくれること。読解に知識が必要なのは無論だけれど、最後は時を超えた「普遍」を信じて跳躍するしかないのだと思う。
- 02:48 たとえば今日読んだ「青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ 朝日の 笑み栄え来て」の箇所。それぞれ「夜」と「朝日」とが擬人化されていると考えるのは、別段ファンタジーを読みつけていなくても自然な解釈だと思うのだが、芝田さんによれば、研究者は別の考えを持っているらしい。
- 02:53 実際、手元の本には「朝日のような華やかな笑顔をして来て」などという注が入っている。いったい誰の笑顔やら。そういえば古典の授業などで、注釈をしている人間が「読み手」あるいは「書き手」としての自然な想像力を欠いているのではないか、と思わされることは、高校生のころからあった。
- 03:09 典型的なのが枕詞。執拗なまでに一切意味はないと教えていたが、いい加減無茶な話だろう。只でさえ文字数に限りがあるのに、作り手が意味を持たせないことなど有り得ない。写真家の畠山直哉さんも都写美でのレクチャーで、展示されている物には全て意図があると考えよ、と云っていたではないか。
- 03:39 そういえば今日触れた古事記の歌謡には、慣れ親しんだ五音・七音にまざって四音や六音の韻律が登場する。そのままでは収まりが悪く、何らかの節回しを付けていたのではないか、との話だったのだが、いま新良幸人『浄夜』を流していて唐突に気付いた。八重山民謡には四音や六音がごく普通に出てくる!
- 03:52 有名な『月ぬ美しゃ』(つくぬかいしゃ)だと「アリカラ アリオル ウフツキヌユ ウチナン ヤイマン テラショウリ」などと云う具合。それだけではなく、言葉の重ね方や全体のリズムに、古事記歌謡や万葉に通じるものがあるな、と感じる。このあたり、既にきちんと論じている本があるだろう。
- 03:59 石垣島で重文の宮良殿内 http://t.co/mpLPnkxi を訪ねたとき、たまたま当主の宮良さん(とても話好きなお爺さん)と軒先で話す機会があった。興味深かったのは、石垣島は水が豊富だったため、京風の雅な文化が根付いたという話。都落ちした平家の貴族が持ち込んだのだと云う。
- 04:10 確かに『鷲ぬ鳥節』や、『とぅばらーま』などの歌詞に感じるのは、土着の匂いというより洗練された修辞であったりする。「鷲ぬ鳥」は現代語訳だと「綾なす羽の鷲の子を 産みまして 美しく艶やかな羽の鷲の子を 孵しまして 鷲の鳥よ 願った鷲」 といった感じ。寄せては返すような、古代のリズム。
- 04:23 宮良殿内には枯山水の庭園さえあった。逆に水が出ない宮古島は文化不毛の地となったと宮良さんは云っていたけど、この辺は先島内部のライバル意識もありそう。ただ、中央で滅びた言葉や文化が周縁に残るという話を考えると、八重山の伝統文化の裡に記紀万葉の風が幾分遺っていても不思議ではない。
- 14:14 @MEG_apr02 あのお爺さんのご親戚とは驚きました(これは世間は狭いというのでしょうか…)。おばあ様もそう仰っていたということは、ますます間違いないのですね。確かに八重山の文化には「余裕」とか「風流」を感じるのです。ご紹介いただいた本、読んでみますね。 [in reply to MEG_apr02]
- 15:17 RT @CONFORT_mag: 古いものを語るときに、よく「かたちは残らなくても精神が残ればいい」いうことが言われます。それはたしかにそうでしょう。でも「精神」を残すためには「かたち」を知ることが必要ですし、「かたち」が消えてしまうことで受け継げないものはあるはずです。(kt)
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