Fri, Aug 20

  • 03:01  HMV渋谷店で買ってきたシュ・シャオメイ(朱曉?)の『バッハ 平均律クラヴィーア曲集第1巻』を聴いている。試聴機を前にするまで全く知らなかったのだけど、一見すると地味に見える解釈の向うに、音楽そのものに対する熱い憧れのような感情がほの見えて、耳から離れなくなってしまった。
  • 03:10  将来を嘱望されたピアニストだった彼女は、17才の時文化大革命に巻き込まれ、内蒙古の労働改造所に送られた。内側のジャケットに、中国語で注釈の入った手描きの楽譜があしらわれているのだけど、これは彼女が秘密裡に持ち出した「平均律」の楽譜を、仲間に回覧するために写したものらしい。
  • 03:17  これ程数奇な人生を送った人であれば、音に込められた痛切な憧れのことも理解できる。自分が試聴しながら思い出していたのは、クラシックを熱心に聴き始めた中学生の頃のことだった。確かにあの頃音楽は、ここではない何処かに魂を連れ出してくれる解放の手段であり、憧れの対象だったのだ。
  • 03:25  「西洋の方は老子を、東洋の方はバッハをかならず学ぶとよいでしょうね」シュ・シャオメイが来日したときの言葉。老子とバッハを対にするのは、言われてみるととても自然な気がする。そう言えばノルシュテインの『話の話』で使われている第一巻第八番のプレリュードは、とても東洋的に聴こえる。

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