"Search for Life: Are We Alone?"

池袋のサンシャインシティで、ニューヨークにあるヘイデンプラネタリウム制作の番組 "Search for Life: Are We Alone?" の日本語版を見る。ヘイデンでの上映をはじめて見たときには、ハリソン・フォードの渋いナレーションとあいまって強く印象に残り、自分の仕事に大きな目標を与えてくれた作品だ。


深海の熱水噴出孔に始まった地球外生命の探求の旅は、火星と木星の衛星・エウロパを巡り太陽系外惑星へ、ついで太陽系と地球の誕生の姿を再現し、そして一千億の太陽と、おそらく一兆にも迫るだろう数の惑星を持つ我々の銀河系の姿、その銀河が一千億個も集まって形作る宇宙の大規模構造へと至る。最後には再び、ドームに青く輝く地球の姿が浮かんで、

"Other life and other minds may dwell on countless other worlds.
But nowhere else in a hundred billion galaxies will we find another planet just like ours. All life on Earth evolved to fit the changing environment of this little world. It made us what we are."

(数え切れないほど沢山の異なる世界の中には、我々と異なる生命や、異なる精神がきっと息づいている事でしょう。
しかし我々の惑星と全く同じものは、一千億個の銀河の中にただ一つとしてないのです。地球上のすべての生命は、この小さな世界の変化し続ける環境に適応する為に進化してきました。それが私たちを、今の姿に形作ったのです。)

"If we can learn to protect our only home in the cosmos, and the life that it brought forth . . .
just think of the new worlds, and ways of being alive, that we might discover."

(もし私たちが、この宇宙でたった一つの故郷を守り、そしてそれが育んだ生命を守る事を、心に刻む事ができるならば…。
私たちはいつか新たなる世界を、新しい生命の姿を発見する事が出来るかも知れません。)

という言葉で締めくくられる。

ヘイデンプラネタリウムは、潤沢な予算とNASAの全面協力のもと、最新の科学知識をベースに極めて高品質なCG映像番組を制作している事で知られているが、アン・ドルーヤンらの手になるこの番組の脚本は、単なる知識の伝達などという枠を越えた、文学的な深みを湛えているように感じる。

スタッフロールでは、感動的なエンディング曲の後、一瞬の間をおいてルイ・アームストロングの "What a Wonderful World" が流れる。
緑の木々。青い空。白い雲。虹。挨拶を交わす人々。赤ん坊。この素晴らしき世界。
広大な宇宙の中に生まれた地球、そして生命のかけがえのなさと、新しい出会いの予感についての物語のあとでは、この歌詞は驚くほど深く滲みてくる。


2001年9月11日。プラネタリウムがあるアメリカ自然史博物館からは、崩壊するツインタワーが見えたという。番組の制作が、ちょうど終盤にさしかかった頃の出来事だった。制作者達はシナリオの最後をどのようなものにするか考え抜いて、今の形になったそうだ。この作品の持つ崇高さ、力強さは、多分そうした所からも来ている。だからこの先天文学の知識がどれ程進んでも、映像技術がどれ程発達しても、永遠のマスターピースとしての輝きは薄れることはないだろうと思う。