Ulrich Schnauss, テラビシア

最近購入したUlrich Schnaussの"goodbye"が魅力的だったので、色々と情報を探して検索していたら、大好きな2トラック目の曲"Shine"の映像を見つけた。

途中まで「何て気合の入ったPVなんだ」と本気で思っていた。心の裡にある強い思いを感じさせる少年の表情がいい。世界の生の姿が、一瞬一瞬に五感を通して鮮やかに飛び込んでくるような、子供時代のある時期を見事に捉えていると思った。

コメントを見ると、曲にあわせて既存の映画を編集したものだという。少なくとも、「マイライフアズアドッグ」などを髣髴とさせる落ち着いた画面の雰囲気から、てっきり欧州で撮影されたものに違いないと思っていたら、それも誤りで、ディズニー制作のファミリー向け映画だという。

米国の本家の予告編を見て、脱力というか、同じ映像から出発してここまで違えるものかと笑ってしまった。まるでこちらの方がMADビデオみたいだ。
http://www.apple.com/trailers/disney/bridgetoterabithia/
日本でも年明けに公開予定だそうで、TVCMももうやっているとのこと。知らなかったけど、日本版の予告編でも、正直見に行きたいとは思わなかっただろう。


「売りたい側」があれこれと弄する手管には、正直もうみんな、飽き飽きしているのではないか。真実を知るためのもう一つの手段が無かった頃には、それでも限られた送り手を無邪気に信じることの中に幸福があったろう。だが今は誰にでも舞台裏が透けて見えてしまう時代だ。見せようとしている一面の嘘くささが増せば増すほど、その裏側を知ってしまったときの落胆はひどくなる。

大衆広告の技法は洗練に洗練を重ね、ついにあらゆるものとサービスを「内容」と全く無関係に、メッセージとパッケージの強度のみで売りつける事が出来るようになり、そして、どこまでも虚ろになった。だが、少なくとも僕にとっては、この作品がどこかの見知らぬ誰かを突き動かして、最初に見た、あの愛すべき映像を作らせるだけの魅力を持っていた、ということの方が重要なのだ。プログラムピクチャーという桎梏の中でもがきながら、制作者が理想に肉薄しようとした、その真実の気持ちが画面から伝わらなければ、見知らぬ誰かも動きようがなかっただろう。


耳に快いけど、何処の誰に当てたとも知れず、内容もよく判らないメッセージを浴びるより、見知らぬ他者の人生を、確かに一瞬横切った真実の断片を、直接ぽん、と手渡される方が嬉しい。だから僕は、この映画を見に行くことを、今からとても楽しみにしている。