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電脳メガネという小道具

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「ゼーガペイン」の時もそうだったけれど、「電脳コイル」を見ていると、SFという枠組みが、ようやく未来を予感させる力を取り戻しつつあるのだな、と改めて実感する。ネットワーク通信技術の爆発的な発展による文明の転回もいくぶん落ち着いてきて、再び遠…

フィリパ・ピアス逝去

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フィリパ・ピアスが昨年12月21日に亡くなっていたことを知る。86歳だったというから、灰谷さんのように殊更無念な気持ちになることは無いのだけど、やはりどうしようもない寂しさがある。「ハヤ号セイ川を行く」の爽やかな夏の冒険の雰囲気が好きだった。「…

「一足お先に、感謝を込めて」

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先日、出張先の宿でふとTVをつけたら、灰谷健次郎さんが話していた。いまから10年近く前に放送されていた、NHK人間大学の『子どもが教えてくれたこと』という番組だった。厳しさと穏やかさが渾然となった風貌、揺るぎない澄んだ眼差し。知らず画面に吸い…

プライスコレクション「若冲と江戸絵画」展

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日本の美術館の展示室で多用されている蛍光灯による照明が、他でもない日本美術の展示にとって最悪であることを明確に指摘したのが、日本語を解さず、日本美術史に疎く、ただ「絵」としての力のみを注視して蒐集を進めた外国人コレクターだった、ということ…

「ファンタジーと言葉」

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最近邦訳されたル=グィンのエッセイ集を読んでいる。この人は相変わらず鋭い。ネットワークの普及によって新しく照らし出された「言葉」そのものの意味や「小説」という表現手段の立ち位置を、むしろ喜んで測っているようにみえる。齢を重ねてもしなやかで…

情報と物質

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量子テレポーテーションに関する入門書や解説サイトを見ていて思うのは、人間にとっての情報と物質が、互いに等価になる地点がどうもあるらしい、ということだ。専門家の直観的理解すら拒む領域に対して素人が論評しても無意味なのは自分でも判っているし、…

“日本におけるドイツ建築”

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六本木の空中高くにあるアカデミーヒルズで、藤森照信さんのレクチャー。森美術館で開催中の東京−ベルリン/ベルリン−東京展の一環で、ドイツの近代建築と日本の近代建築の関わりについての話だった。 法務省の赤レンガ館など日本の官庁街を計画した明治政府…

ジョン・ハウ展オープニングレセプション

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夜はカナダ大使館に出かける。「指輪物語」の挿画や、その映画版三部作のコンセプトワークを手掛けた事で広く知られるようになったジョン・ハウの原画は、クレーとは打って変わってポスターカラー等の現代的な画材で描かれているにもかかわらず、イラスト的…

パウル・クレー展

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八重洲・大丸ミュージアムのパウル・クレー展へ。あまり著名な作品は出品されていなかったと思われるが、やはり線に卓越した画家だけあって、初めて目にする肉筆からは非常な緊張感が伝わってくる。ベンヤミンが自分の雑誌の名前に引用した「天使シリーズ」…

あめりか

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月曜の帰国以来、熱に浮かされた様な状態でいる。自分が受け取ったもの、感じた事に就て考えをどうにか纏めようとするのだが、何から手を付けていいやら見当がつかない。にも拘らず、書く事で何かを吐き出さなければどうにも立ち行かないと云う焦燥だけは存…